症状の変化 その6——発作の段階
その後、激しい発作の起こる頻度がだんだんと増えていった。初めは空腹時に起こっていたが、食間や食後すぐ、食中にも起こるようになった。空腹時に血糖が下がるのはもちろん予想がつくが、食間や食後、食中になぜ発作が起こるのか分からずにいた。しかも起こると、気がついたときはもう遅く、あわてて糖分を摂取しても発作はすぐに治まってはくれなかった。
この、食間、食後、食中の発作というのも、インスリノーマの傾向と言える。インシュリンは、糖分に反応して分泌される。通常血糖値は、食後30分から1時間をピークに緩やかに下降して、3、4時間後には空腹時程度になり、その数値が保たれる。しかしインスリノーマの場合、糖分に対するインシュリンの反応が大きい(分泌される量、速度ともに)ため、血糖値が上がる前の食中や食後すぐに、インシュリンが大量分泌されて低血糖に陥ったり、ピーク時のインシュリン分泌量が多すぎて、食間に低血糖になる。また、症状に気づいて糖分を摂取してもインシュリンの量が多すぎて足りなかったり、せっかく摂った糖分に反応してさらにインシュリンが分泌されてしまい、回復が遅くなるのだ。
さらにわたしの場合、症状が進むにつれて発作の状態も変わってきた。初めの頃は、気分が高揚して幼児や酔っぱらいのようにはしゃいでいた。数ヶ月して発作の回数が増えていくと、気分の高揚はなくなり、焦燥感とともに発作が始まって訳の分からないことを言ったり、方向が定まらないままふらふらと左右に歩いたり、くるくる回ったりした。さらに症状が進むと、とても小さなことが気になったり(たとえば、髪がほほに触れるとか、コンタクトレンズのごろつきがどうしようもなく気になるとか)、簡単なことが分からなくなって(箸がどこにしまってあるかとか、どうやってフタをあけるかとか)、苛立って暴れだした。
どの段階でも共通していたのが、最終的には眠る(意識を失う?)ことだった。そして目を覚ました後は、その症状が回復していた。前にも書いたが、脳は糖分がないと働かない。だからエネルギーをセーブするため、もしくはエネルギー切れで眠ってしまうのだ。目を覚ますと回復しているのは、その前になにかしらの糖分を摂っていたからだと思われる。もし糖分を摂らないままで意識を失い、その後も血糖が低下して0の状態が3時間以上続くと、脳死になってしまう。
発作で一番怖かったのが、意識があるのに、行動を制御できないことだった。だから、発作の起きたことやその状況は鮮明に覚えている。なんだろう、夢を見ているような感覚かな? 一生懸命、「何やってんの? あぁ、だめだよ。ほら、飴なめないと。ブドウ糖飲んで!!」って思っているのに全く体がいうことをきかないのだ。
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